僅かな外灯が照らす河川敷で、男二人缶コーヒーを片手に座り込む姿は中々寒い光景だなと思う。面白味も無い景色を眺めながらプルタブを起こせば、空気の抜ける音が空しく響いた。
 夏川はそんなこと気にも留めていないらしく、俺が驕った無糖の缶コーヒーを煽った。


「……で?」


 唐突に振られた問い掛けに、俺は何を答えればいいのか解らなかった。
 何処から話せば良いんだろう。俺が郵便屋さんになった時のことから話すのなら中々の長編だ。考え込んでいると、面倒臭そうに夏川が言った。


「何して和輝怒らせたんだよ」


 それまでの経緯は省いていいらしい。ほっとしたような、残念なような。


「和輝に、女の子紹介しようとしたんだよ」
「はあ。何で」
「いや、だって、本当に良い子なんだよ……」


 神部さん。
 その名を零すと、何か合点したように夏川が相槌を打った。


「何、お前。神部さんを和輝に紹介しようとしたの?」
「うん」
「そりゃ、お前。流石の和輝も怒るだろ」


 俺だって怒るよ、と事も無げに夏川が言った。
 それは何に対する怒りだよ。俺は思った。


「前に匠が言ってただろ。和輝だって好きな子がいて、でも簡単に付き合うとか出来る状況じゃないって」
「そうだけど。だったら、身近にいる子の方がいいだろ」
「別に女の子に不自由してねーだろ。そんなこと、和輝が何時望んだんだ」


 如何やら、俺は余計なお世話を焼いてしまったらしい。
 冷静になれば簡単に行き当たる事実なのに、あの時の俺は頭がどうかしてしまっていたようだ。


「それから、俺達はお前がその神部さんとメールしてるのをずっと見て来たんだ」
「はあ」
「自分がどんな顔で携帯見てるか、知らないだろ」


 夏川の言っている意味が解らない。俺が黙っても夏川は続けた。


「部活前も後も、うぜえくらい携帯気にしやがって。女子か。それで気付かねー方が無理だろ」
「はあ」


 俺の間の抜けた声に苛立ったらしい夏川が舌打ちをした。野球部は短気な奴が多い。短気は損気だぞ、なんて軽口を叩く余裕は無かった。
 苛立ったように、夏川は殆ど叱咤するように言った。


「お前、神部さんのこと、好きなんだろ」


 一瞬、凍り付いたように思考がフリーズした。
 何、如何いうこと? 夏川は何を言っているんだ。


「お前、自分が好きな子を別の男に紹介するとか正気の沙汰じゃねーよ。和輝も惚気かと思ったら、いきなり紹介する云々の話になって驚いただろうぜ」
「いやいや、お前、何言ってんの」
「お前が何言ってんの。何で、神部さんを和輝に紹介しようとするんだよ」


 何でって、そんなの訊くなよ。
 でも、話さなきゃ何も始まらない。


「神部さんはさ、和輝のことが好きなんだよ」
「ふーん」
「前に一度、手紙で告ったんだけど振られて」
「可哀想だからって?」
「違う!」


 思わず声を荒げたけれど、夏川は眉一つ動かさなかった。短気なようでいて、元来の性格は冷静だ。試合でもマウンドに上がればどんな窮地でも表情を変えない我らがエースだった。


「一度はっきり断ってんだろ。じゃあ、それが答えじゃねーか」
「そうだけど……、でも、本当に良い子なんだよ」


 また一つ、夏川が舌打ちをした。埒が明かねーな、と独り言のように吐き捨てた。


「お前は和輝も好きで、神部さんも好きなんだろ」
「うん」
「それで好きな者同士くっつけて、自分は身を引いて満足すんのか?」
「満足……」


 和輝と神部さんが手を繋いで歩く姿を思い浮かべる。彼女は女子の平均身長はあるから、和輝の方が小さいだろうな。それでも、和輝はさり気無く車道側を歩いたり、紳士的にエスコートしたりするんだろうか。それ対して神部さんが嬉しそうにはにかんだり、頬を染めたりするのか。
 それは、何と言うか、複雑だ。


「和輝は望んでねーんだから、無理にお前の感情を押し付けるなよ。そういうの、あいつ一番嫌いだろ」
「そうだけど……」
「その子を好きなのはお前だろ。和輝を言い訳にすんなよ。男なら当たって砕けろよ」


 簡単に言うなよ、と言い返したかったけれど、今の情けない自分に追い打ちを掛け首を絞める結果になることは目に見えていたから黙っていた。


「いいじゃねーか、好きな人がいる相手だって。付き合ってる訳でもねーし。誰が文句言うんだよ」
「でも」
「何でそんなに踏み止まるんだよ。振られるのが怖いのか」
「そうじゃないけど」
「じゃあ」
「だって、和輝は誰とも付き合えないどころか、告白すら出来ないのに、俺だけ」


 言った瞬間、夏川はきょとんと目を丸くした。
 そして、次の瞬間には盛大な溜息を吐いた。


「お前、良い人過ぎるよ」


 意味は解らなかったけれど、それが褒め言葉でないことだけは解った。




少年Sの憂鬱(4)




 翌日、神部さんにメールを返していないことを思い出して、倦怠感に包まれる身体を起こして携帯を開くと着信履歴が残っていた。それが匠であったことに寝起きで固まった身体が軋んだ。電話の相手が匠なのか、それとも和輝なのか、文字では判別が付かない。
 相手の顔を見ずにコミュニケーションが取れるこの機器の欠点を垣間見て、背筋がひやりとした。
 もうすぐ朝練で顔を合わせることになるのだと言い訳をして携帯を閉じる。窓の外には朝日が美しく輝いていた。
 校門に着くと、ヤンキーのようにしゃがみ込む匠がいた。練習開始時刻は目前まで迫っているにも関わらず、着替えすらせず制服のまま匠は誰かを待っているようだった。毎日共に登校して来る和輝をわざわざ校門で待つ必要も無いだろうと思い至って、その相手が自分だと理解した。それを裏付けるように匠は俺の姿を認めると立ち上がり、昨日の夏川のようにポケットに手を突っ込んだまま呼び掛けて来た。


「ちょっと面貸せよ」


 眉間に皺を寄せて不機嫌そうな匠が言った。感情が表情になっているのではなく、早朝だからそうなのだと萎縮しそうな自分に説明してみる。無駄な足掻きだった。
 朝練のことも無視して、部室には寄らずに匠は真っ直ぐ昇降口の自販機前まで行くと、先程のようにしゃがみ込んだ。朝一で缶コーヒーを驕れとは言わなかった。鞄の中からドリンクボトルを取り出すと静かに口を着けた。和輝なら此処で雰囲気を変えるように微笑み掛けてくれるのだろうけど、匠は相変わらずのしかめっ面で俺を見上げた。居た堪れなくて、隣にしゃがみ込む。


「朝練は?」
「今日は休むって言って来た。お前の分も」


 つまり、逃げ場は無いということだ。
 知らず溜息を零していたようで、匠は「溜息吐きてーのはこっちだよ」と不満げに口を尖らせた。


「なあ、和輝は?」
「怒鳴っちまったこと、反省して落ち込んでた。尤も、俺はあれが正常な行動だと思ってる」


 そりゃ、俺だってそう思うよ。あいつは聖人君子じゃない。感情のある人間だ。
 匠は猫のような目をじろりと此方に向けた。


「お前、何で好きな女を回すようなこと言うんだよ。意味が解んねーよ」


 如何やら、俺の感情は少なくともチームメイトには只漏れだったらしい。いきなり核心を突いた匠の言葉に、昨夜の夏川とのやり取りを繰り返すのかと幾らか疲れを感じる。俺にそんな権利は無いけれど。
 匠は手の中のドリンクボトルを弄びながら言った。


「好きなら好きでいいじゃねーか。変な遠慮してんじゃねーよ。恋愛禁止なんてどっかのアイドルグループみてーなこと、誰が決めたんだよ」
「そんなの解ってんだけど……」
「けど? けど何だよ。言い訳すんな。今のお前、最高に格好悪ィぞ」


 ずけずけと匠が本音を言うのは、俺に気を許している証拠だ。解っているけれど、歯に衣を着せぬ物言いが今の俺には辛かった。


「お前の言うその子が和輝のこと好きだから、何なんだよ。本当に好きなら、自分に惚れさせるくらいのことして見せろよ。仮に和輝がその子のこと好きだったとしても、お前が努力した結果奪うことになっても恨みやしねーよ」


 匠はクールに見えて、意外と肉食男子だったらしい。
 その肉食男子は舌打ちし、立ち上がった。


「どうせ、夏川にも言われてんだろ」


 俺が曖昧に返すと、匠は益々不機嫌そうに目を細めた。


「和輝を言い訳にすんな。人の気持ちなんて簡単に変わっちまうんだ。この二年間、お前はそれを間近で見て来た筈だろ。大体、お前、和輝を見縊り過ぎだよ。あいつなら、絶対に諦めないし、抱え込んで離さねーよ」


 俺達みてーに。
 其処で漸く、匠が笑った。くつりと口角を釣り上げただけの笑みは、何処か悪戯めいていた。
 チャイムが鳴った。午前八時半。昇降口には登校して来た生徒が溢れている。匠は壁掛け時計を確認すると、ポケットから携帯を取り出した。こういう時、様子を窺うようにメールの一通でも入れるのは何時も俺だった。携帯を開いて何やら操作し、すぐにしまう。匠は半身になって言った。


「じゃあ、俺、部室寄ってくから。鞄もあるし、落ち込んでるバ和輝フォローしなきゃなんねーから」


 そう言えば、落ち込んでるって言っていたなと思い出した。そんな時も和輝は練習に支障を来さない立派なキャプテンだった。
 顔も良くて運動神経も良くて性格も良くて。そんな和輝に比べて俺に何があるんだろう。
 落ち込みそうな自分に気が付く。何だ、俺。こんなに傍にいたのに、劣等感ばっかりじゃねーか。誰もあいつのこと解って無いなんて言って、俺だって解って無い。
 和輝だけじゃない。匠のことも、夏川のことも、何も解ってないじゃん。


「落ち込んでんのか?」


 ふと顔を上げた先で、朝日に照らされた影が映った。
 くそ、登場まで格好良いなんて反則じゃねーか。
 小さな影は背筋を真っ直ぐ伸ばして、俺の目の前まで歩いて来た。朝練後だというのに、何時だって汗臭くない和輝は爽やかな洗剤の匂いを纏っている。


「うるせーよ」
「はは。何だ、元気じゃん」


 和輝の後ろで、鞄を三つ担いだ夏川が笑っていた。
 野球部の三年生はマネージャーを除いてたったの四人。あの地獄のような二年間を乗り越えて来た戦友だ。ずっと傍にいたのに、お互いのことを解り合えないなんて空しいことだ。けれど、そんな俺達の太陽である和輝が何でも無いように笑って言った。


「箕輪とはずっと一緒にいたのに、昨日は何考えてんだか解んなくてすっげー焦った。落ち込んで反省して、部活出たら忘れちまった」
「本当、単純だよなあ」


 そういう夏川だって、和輝がただの単純馬鹿でないことは知っているだろう。
 和輝が微笑んだ。俺が待ち望んだ、雰囲気を変えるような美しい笑みだった。


「どんなに親しくたって、お互い全部解り合うなんて不可能なんだよ。俺と匠だって、生まれた時からずっと一緒なのに今でも喧嘩しまくりだし」
「当たり前だろ。性格も価値観も違う、別人なんだから」


 匠が言った。口元に浮かぶ微かな笑みが、何処か嬉しそうだった。
 幼馴染で親友で好敵手だという二人が、声を揃えて言った。


「だからこそ、面白い」


 ざわりと、風が吹き抜けた気がした。落ち込んで閉じ掛けていた心に光が差したようだった。
 解らなくていい。解り合えなくていい。ただ、許し認め合えればそれでいい。
 二人の築いて来た関係を垣間見たような気がして、何故だか感動してしまって、涙腺が緩みそうだった。こんなことで泣くなんて格好悪ィ。それでも、微笑む和輝がまるでキリストみたいに神々しくて目が眩む。星原が和輝をヒーローと言って、蝶名林が神様だと崇拝するその理由が解るような気がした。
 つい俯き掛けると、夏川がはっとしたように言った。


「あ、神部さんだ」


 名前に反応して顔を上げる。匠が「どれ?」と学生の群れを見渡す。
 ほら、あれだよ。あのポニーテールの子。和輝が指差す。いや、それ宮下さんだから。
 二人のやり取りに溜息を吐きつつ、夏川が言った。


「ほら、行って来いよ」
「はあ?」
「そうだ、早く!」
「行っちまうぞ!」


 追い打ちを掛けるように言う和輝と匠。夏川が背中を押す。
 こんな顔で会いに行かせる気かよ、と文句を言いたかったけれど、俺そっちのけですっかり盛り上がっている三人は聞く耳持たないだろう。
 訳が解らないまま背中を押されて、俺は走り出した。
 校舎に進入する生徒の群れで衝突しながら掻き分け、クラスメイトと談笑しながら上履きを取り出す神部さんの手首を掴んだ。強く握ったら折れてしまいそうな細さだった。
 驚いた神部さんが振り返る。俺はすっかり息が上がってしまって、名前を呼んで二の句が継げないまま呼吸を繰り返した。これじゃ、不審者だ。目を丸くする神部さんに軽蔑されちまう。
 後ろから、愛すべきチームメイトの声援が聞こえる。頼もしいような、煩いような。


「……昨日は、メール、ごめん。返せなくて……」
「ううん。いいよ、それより……」


 如何したの、と小首を傾げる仕草が可愛らしい。純粋にそう思った。
 何だ俺、こんなに神部さんのこと好きになってたんだ。


「俺じゃ、駄目かなあ」
「え?」
「俺は和輝程イケメンじゃねーし、性格も男前じゃねーし、運動神経抜群って訳じゃねーけど……」


 頑張れ!
 チームメイトが叫んでいる。何事かと、野次馬の意識が其方に向いている。


「神部さんが好きだ。俺と付き合って下さい」


 手首を掴んだまま、まるで逃がさないような素振りで。
 思い描いた格好良い告白シーンは、夢のまた夢だ。そりゃ、現実は映画みたいにはいかないよ。たった数秒の台詞を打ち明けるだけでも心臓が破裂しそうに痛いんだ。怖くて足元がぐらぐら揺れるんだ。
 なあ、応えてくれよ。俺じゃ、駄目か?
 神部さんは驚いたように目を真ん丸にする。隣の女の子が肘で小突きながら如何する、なんて茶化す。ああもう、良いからもう皆どっか行ってくれよ。俺達を中心に何時の間にか輪が出来ていて居た堪れない。神部さんは一度深呼吸をして、笑った。
 花が綻ぶような笑顔って、こういうのを指すんだろうなと思った。


「はい」


 それが聞き間違いじゃないことを、どうやって確かめたら良いんだ。都合の良い夢なんじゃないかと頬を抓りたい心地だったけれど、すぐさま雰囲気をぶち壊す戦友が雪崩れ込んで来た。


「――ったああああ、箕輪ぁ!」
「良くやった!」
「おめでとう!」


 自分のことのように狂喜乱舞する愛すべき馬鹿共。というか、この場に和輝が現れること自体が問題だ。
 けれど、神部さんは少し驚いた顔をしてすぐ俺に向き直った。


「私も、箕輪君が好き」


 その瞬間、体中の血液が顔面に集まっているんじゃないかと思うくらい熱くなった。
 顔が赤いぞ、なんて和輝が肩を組んで茶化す。何でお前、そんなに空気読めないの?
 そうしたら、神部さんが悪戯っぽく笑って。


「郵便屋さん、ありがとう」
「どーいたしまして、お嬢様」


 和輝が演技掛かった動作で恭しげに頭を下げる。宛ら出来る執事みたいな動きとやり取りに違和感を覚える。何なんだ、これ。
 二人を横から見ていた匠と夏川が残念そうな目を向けて来る。


「お前、嵌められたんだよ」


 そう言って、匠が和輝を引き摺って歩いて行った。三人分の鞄を担ぎ直した夏川が、和輝に拳骨一つ落として追い掛けて行った。
 その言葉の意味が解ったのは放課後のことだった。部室の床に正座させられた和輝は、匠と夏川の詰問に洗いざらい吐き出した。
 事の発端は、俺が神部さんから手紙を預かった日だ。手紙の内容は和輝への告白ではなく、俺攻略の手助けを求めるものだったらしい。始め和輝は、面白半分に関わりたくないと断ったらしい。それが俺の見た和輝の返事の手紙の内容。その後、和輝が直接断りの手紙を渡しに行くと、自分のメールアドレスを俺に教えて欲しいと言伝を受けた。
 それから俺と神部さんのメールのやり取りが始まった、とのこと。


「じゃあ、神部さんが何かと和輝のこと気にしてたのは?」
「俺がばらさないか心配だったんじゃねーの?」


 さらりと告げた和輝の言葉に呆れて言葉を失くす。
 何だ、結局、俺は二人の掌で踊らされていたのか。


「女って怖いな」
「いやいや、全部箕輪の勝手な勘違いだろ」


 地べたに正座したまま、和輝が否定する。相変わらず、格好の付かないキャプテンだ。
 部活開始時刻が迫るに連れて後輩が談笑しながら部室にやって来る。正座するキャプテンの様に一瞬驚いたようだったが、すぐに何時ものことだと何事も無かったかのように仕度を始めて行く。


「じゃあまあ、そろそろ部活始めるか」


 立ち上がった和輝が身体を伸ばす。猫のような背伸びに欠伸を一つ。「今日は地獄だぞ」なんて爆弾発言を一つ投下した。
 竦み上がる後輩を横目に見ながら、俺はロッカーから取り出した携帯を開いた。


『部活、頑張ってね』


 たった一言の文章で、こんなにやる気が出るなんて俺もつくづく単純だ。
 携帯を閉じる。隣で夏川が呆れたように言った。お前、本当に御人好しだよな。違いない。
 それでいいんだ。だって、そのお蔭でこんなに沢山のものを得られたんだから。
 振り返るあの告白は大勢の生徒に見られ、俺はすっかり学校の有名人になっていた。神部さんは苦笑いしていたけれど、満更でも無さそうなのでそれで良しとする。
 バインダーを片手に校門で霧生さんが待ち構えていた。二日続けて外周なんてことは無いだろう。筋肉痛で動けない醍醐が最後尾で顔を蒼くしている。


「じゃあ、今日は抜き打ちトスノックデスマッチだから」


 和輝が言った。また下らないメニューを考えたらしい。
 大量の荷物を載せた自転車を押しながら、後輩がざわめく。呆れたような匠と夏川に比べ和輝の足取りは軽い。俺の足取りも軽い。
 見上げた空が何処までも青かった。学校を後にする俺の背中に、あの音楽が突き刺さる。振り返った先、校舎の窓から神部さんが手を振っていた。

2013.1.20