陽の下の子供たち














 夏の生暖かい風が吹く。丘の上にある市河家には布団が干され、それを丁度母親の美咲が取り込んでいた。
 子供たちの分だけで四枚。数ヶ月前までは二枚だった。

 家が賑やかで嬉しい事だ、と美咲は喜び、家にも笑顔が増えた。


 後ろで足音が聞こえて振り返ると、俊がバットやらスパイクやらグローブやらを抱えていた。
 ベランダの下では、裕が「 まだかー。 」と急かしている。


 「 何処かに行くの? 」

 「 …野球しに。 」


 玄関で「 ただいま。 」と声が聞こえた。
 お帰りと言う裕の反応からして、部活を終えた脩が帰宅したのだろう。

 トントンと階段を上る音。


 「 ただいま、お母さん。 」

 「 お帰り。 」


 脩は持っていたラケットバッグを下ろして箪笥を開けた。
 脩と俊の服が真ん中の区切りでしっかりと分けられている。

 二卵性の双子。
 脩と俊は近所でも有名な兄弟だ。

 脩は愛想も良く、親切で、しっかりした兄だと近所でも評判だ。
 また、成績も優秀でスポーツ万能。テニスは全国大会出場。と、完璧だ。

 一方、俊はその逆。
 頭の良し悪しや運動神経は脩と同等だが、そのしかめっ面が有名。


 ここまで正反対の双子も珍しい、と。


 脩は何でも自分でやってしまう為、少し寂しさも残るが手が掛からず良い子だと思っている。
 俊は元より誰にも頼らない。母である美咲にも素っ気無い。


 「 俊、まだ〜? 」


 待ち草臥れた裕が下で声を上げる。
 俊は「 今行くから黙ってろ 」と大声で怒鳴る。
 それでも、裕は笑っている。


 俊は仕度を終えて部屋を出て行こうとしていた。
 いつものように美咲は「 行ってらっしゃい 」と。

 いつもなら、俊は無言で出て行ってしまうが、今日は何か違った。




       「 …行って来る。 」




 ふと、振り返るとそこにもう俊の姿は無かった。


 玄関の開く音がして、俊の姿が。
 文句を言う裕に「 悪い。 」と悪びれもせずに軽く謝って走り出した。


 「 美咲さん!行ってきます!! 」

 「 気をつけてね。行ってらっしゃい。 」


 あの子が来るまで、皆とろくに目もあわせなかった俊が挨拶をする。
 家の中に笑顔が溢れた。


 不思議な子だと思う。


 美咲は布団を干し終え、部屋に戻って行く。
 外から俊の笑い声が聞こえた気がしたが、美咲は振り返らなかった。